梅雨の季節になると、朝の出勤が少し楽しみになります。
というのも、当院の職員駐車場は、実は“隠れたカタツムリスポット”だからです。
雨の朝、愛宕山沿いの斜面に目を向けると、小さなカタツムリたちがコンクリートの壁をゆっくり進んでいます。
水滴をまとった殻はやさしく光り、木々を目指して黙々と動くその姿に、毎回どこか心がふっと和らぎます。
作業療法士として働くなかで、私たちは「その人らしい暮らし」や「その人のペース」に寄り添うことを大切にしています。
一気に何かを変えるのではなく、日々の生活のなかにある「ほんの少しの前進」を見つけていくこと。
たとえば、ちょっとした工夫で動作が楽になったり、日課にしていた庭仕事がまたできるようになったり――。
そんな小さな変化に気づき、一緒に喜び合えることが、作業療法士としてのよろこびでもあります。
雨の日のカタツムリも、そんな「小さな歩み」の象徴のように思えるのです。
誰かに見られることもなく、音を立てることもなく、でも確かに前へ進んでいくその姿。
慌ただしい日々のなかで彼らを見つけるたびに、「自分もあんなふうにありたい」と思います。
また雨の日の駐車場で、そっと殻の中から顔を出すカタツムリに出会えますように。
その姿は、これからもきっと、私の背中をそっと押してくれるのだと思います。
作業療法士